ゼロ時間へ
Towards Zero

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ノンシリーズものの長編8作目(メアリ・ウェストマコット名義の作品を除く)。バトル警視、5度目の登場。
1944年7月、Collins社から刊行された。 米国では1944年、Collier's Weekly (6 May ~ 20 May 1944)に「Come and Be Hanged!」のタイトルで連載された後、同年Dodd, Mead社から刊行された。
日本語初訳は1951年の『殺人準備完了』(三宅正太郎訳 早川書房)。

早川書房

(日本語版翻訳権独占)
1951
殺人準備完了
三宅正太郎訳 早川書房 世界傑作探偵小説シリーズ(9)
プロローグ/ドアをあけると、人がいる/白い雪と赤い薔薇/鮮やかなイタリア人の手/零時間/あとがき
装幀:塙忠
1958
ゼロ時間へ
田村隆一訳 早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(392)
その部屋には、たった一人しかいなかった。 そして物音といえば、その人間が一行ずつ書いてゆくペンが、紙の上を走る音だけだった。 紙の上に書かれてゆく文句を、もし誰かが読んだとしたら、われとわが目をうたぐったにちがいない―― なぜなら、そこに書かれてゆくのは、細心の注意をはらって作られた綿密な殺人計画だったから。 時間――場所――手口――犠牲者……。 その人間は、そこまで書いて顔をあげた。 よし、準備は完了だ―― あらゆる人々の反応は予測され計算されている。 万人の中に潜む善と悪とは、ここに一個の悪魔の意のままにもてあそばれ、いまや一つの調和を形づくっているのだ。 その人間は、頰に微笑を浮かべつつ最後の項目――日附を書きこんだ。 九月のある日だった……。 探偵小説はたいてい殺人で始まる。 だが、殺人というものは終局なのだ。 物語はずっと前から始まっているのだ。 時によってはなん年も前から、ある人々を、ある日、ある時、ある場所へと導いてそして、あらゆるものがある一点ゼロ時間にむかって集中されているのだ! あらゆる探偵小説のマンネリズムを破ったクリスティー女史の野心作!
1976
ゼロ時間へ
田村隆一訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫(HM1-8) ISBN:9784150700089
静寂につつまれたその部屋にはたった一人の人間がいるだけだった。そして物音といえば、その人間が滑らせるペンの響きばかり……だが、もし誰かがその文章を読んだとしたら驚愕の色を隠すことはできないだろう……そこに綴られていたのは、細心の注意と努力を払って練られた綿密周到な殺人計画だったのだ!そして数ヵ月後平穏な漁村で起った残忍な殺人……つねに殺人ではじまる従来のミステリの常識を破り、殺人の企てられる瞬間から殺人の瞬間《ゼロ時間》へと遡っていく……才気溢れるクリスティーの野心作。
序章/ 『ドアをあけると、人がいる』/ 白い雪と紅い薔薇/ 微妙な陰謀/ ゼロ時間
解説:福永武彦「ソルトクリークの方へ」
表紙:真鍋博
登場人物
カミラ・トレシリアン夫人金持ちの老未亡人。ガルス・ポイント主人
メリイ・アルディンオレシリアンの遠縁の従妹
ネヴィル・ストレンジ万能スポーツマン
ケイネヴィルの二番目の妻
オードリイネヴィルの最初の妻
テッド・ラティマーケイの友人
トーマス・ロイドオードリイの遠い従兄
ハーストール執事
バレットメイド
アリス・ベンサムメイド
エンマ・ウエルズメイド
スパイサー料理女
アンドリュー・マクハーター自殺しそこねた男
トリーヴス有名な弁護士団の一員
ロバート・ミッチェル警察署長
ラーゼンビイ博士警察医
ジョーンズ部長刑事
バトルロンドン警視庁警視
ジェームズ・リーチ地方警察警部。バトルの甥
2004
ゼロ時間へ
三川基好訳 早川書房 クリスティー文庫(82) ISBN:9784151300820
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった――人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向けて、着々と進められてゆく綿密で用意周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと評価の高い画期的な野心作を新訳で贈る。
解説:権田萬治

その他の出版社

2006
チムニーズ館の秘密
榛野なな恵 集英社 コーラスクイーンズコミックス
「チムニーズ館の秘密」「追憶のローズマリー」「ソルトクリークの秘密の夏」の3作品を掲載!

映像化

テレビドラマ
Verso l'ora zero
1980年 イタリア |Verso l'ora zero (1980) on IMDb
監督:ステファノ・ロンコローニ
出演: Sergio Rossi(トーマス・ロイド)Giuseppe Pambieri(ネヴィル・ストレンジ)ラウラ・トロッター(ケイ)Margherita Guzzinati(オードリイ)アンジェラ・グッドウィン(メリイ・アルディン)アンドレア・ボシック(トリーヴス)アリダ・ヴァリ(トレシリアン夫人)ファブリツィオ・モローニ(テッド・ラティマー)レナート・モンタルバーノ(バトル警視)マウリツィオ・ロモーリ(リーチ警部)
映画
ゼロ時間の謎 L'Heure zéro
2007年 フランス |Towards Zero (2007) on IMDb
監督:パスカル・トマ 脚本:フランソワ・カヴィリオーリ、ナタリー・ラフォリ、クレマンス・ドゥ・ビエヴィーユ、ロラン・デュヴァル
出演: フランソワ・モレル(バタイユ警視)ダニエル・ダリュー(カミーラ・トレシリアン)メルヴィル・プポー(ギョーム・ヌヴィル)ローラ・スメット(キャロリーヌ・ヌヴィル)キアラ・マストロヤンニ(オード・ヌヴィル)アレサンドラ・マルティネス(マリ=アドリーヌ)クレマン・トマ(トマ・ロンドー)ザヴィエ・ティアムエルベ・ピエールヴァニア・プレミアニコフジャック・セレヴァレリアーヌ・ドゥ・ヴァラヌーヴPaul MintheCarmen Durandドミニク・レイモンCamille BalsanAriane RousseauHassen Brahiti
テレビドラマ
ゼロ時間へ Towards Zero
2008年 英ITV 「アガサ・クリスティー ミス・マープル」Agatha Christie's MARPLE Series 3 |Towards Zero (2007) on IMDb
監督:デービッド・グリンドリー 脚本:ケビン・エリオット
出演: ジェラルディン・マクイーワン(ミス・マープル)ジュリアン・サンズ(トマス)ゾーイ・タッパー(ケイ)ポール・ニコルズ(ラティマー)グレッグ・ワイズ(ネヴィル)サフラン・バローズ(オードリー)ジュリー・グレアム(メアリー)トム・ベイカー(トリーブス)アイリーン・アトキンス(カミーラ)ウェンディー・ノッティンガムアメルダ・ブラウン(バレット)ピーター・シモンズ(ハーストール)エレナー・ターナー・モスガイ・ウィリアムズ(ラーゼンビイ博士)ジョー・ウッドコック(アリス)アラン・デービス(マラード)ベン・メイエス
テレビドラマ
L'Heure zéro
2019年 France2 「アガサ・クリスティーの謎解きゲーム」Les Petits Meurtres d'Agatha Christie |L'Heure zéro (2019) on IMDb
監督:ニコラス・ピカール・ドレイファス
出演: サミュエル・ラバルト(ロランス警視)ブランディーヌ・ベラヴォア(アリス)エロディ・フランクバルバラ・シュルツヌーノ・ロペスマリー・ベルトドミニク・トマ(トリカール警視正)シリル・ゲイAlyzée Costesアネット・ロウケイクリスチャン・バン・トムAlban CastermanEmmanuel Plovierトーマス・デバエンフランソワ・ゴダールBubulle

戯曲版

Towards Zero

初演:1956年9月4日 セント・ジェームズ・シアター(ロンドン)

2018
戯曲 ゼロ時間へ
『十人の小さなインディアン』 渕上痩平訳 論創社 論創海外ミステリ ISBN:9784846017224
英国ミステリの女王が遺したミステリ戯曲から傑作三編を厳選したクリスティファン待望の作品集!ボーナストラックとして単行本未収録の短編「ポワロとレガッタの謎」を収録。解説はアガサ・クリスティ研究家の数藤康雄氏。
「戯曲 十人の小さなインディアン」「戯曲 死との約束」「戯曲 ゼロ時間へ」「ポワロとレガッタの謎」を収録。

国内上演

2006
ゼロ時間へ

吉祥寺シアター Theater Harmony East
演出:グレッグ・デール
出演:川端槇二(マシュー・トレビス)、若尾哲平(バトル警視)、三浦丘美子(トリレシアン夫人)、池田俊彦(トマス・ロイド)、岩田翼(ネヴィル・ストレンジ)、林智恵(ケイ・ストレンジ)、小山萌子(オードリー・ストレンジ)、西原純(リーチ警部)、伽藍琳(メアリー・オールディン)、田中慎吾(テッド・ラティマー)、小田切健(ベンソン)、平井智美(ジェーン・バレット)
2009
ゼロ時間への殺意

日本橋劇場 演劇集団たつのおとしご会
演出:佐藤修
出演:松田宣子(オードリー)、佐藤せつお(ネヴィル)、花輪和枝(ケイ)、三井淳子、阿久津雄児、宮崎精一、森秋子、青木徹郎、金川博(バトル警視)、藤野健一、小幡喬士

その他

『ゼロ時間へ』が刺さった人へ
四人の女
パット・マガー 吉野美恵子訳 東京創元社 創元推理文庫 ISBN:9784488164065
前妻、現夫人、フィアンセ、それに愛人――人気絶頂のコラムニストをとりまく四人の女性。 彼はひそかに自宅のバルコニーの手摺に細工した上で、四人をそろって招待し、ある晩、ディナー・パーティを開いた。 彼には、その中の一人を殺さねばならない動機があったのだ……! 一作ごとに趣向を凝らす才媛が、被害者捜しの新手に挑む傑作!
コラム  マガーには一風変わったシチュエーションの作品が多いのです。 殺人犯が4人の客の中から被害者が生前に手配していた探偵を探す『探偵を捜せ』、 新聞記事に知人が殺人で逮捕されたとあるが肝心の被害者の名前がちぎれていてわからない『被害者を捜せ』、 状況的に目撃者がいるはずなのに何故か誰も名乗り出ない『目撃者を捜せ』、 知人からの手紙で「あなたのおばさまが殺人を」と知らされたけど…『七人のおば』、 といった具合。
 この作品も元夫の殺人“計画”を知った元妻が、夫が誰を殺そうとしているのか推理するという設定です。 元夫に気取られないように振舞いながら犯行が行われる前に対処しなければならない“現在”と、元夫のターゲットを絞り込むべくその人生を詳細に振り返る“回想”がフラッシュバックする展開がとてもスリリング。
 登場人物それぞれの個性が十分に書き込まれていて、事件なんか起こらなくても(起きますが)十分に“読ませる”ストーリー展開です。 クリスティ・ファンには必ずオススメする作家のひとり。