パディントン発4時50分
4.50 from Paddington

英語版・世界の表紙ギャラリーはこちらをクリック

“ミス・マープル”シリーズ8作目となる第7長編。
1957年、John Bull (5 October ~ 2 November 1957)に簡略版連載の後、同年11月にCollins社から刊行された。 米国では同年、Chicago Tribune (27 October ~ 7 December 1957)に「Eyewitness to Death」のタイトルで連載された後、同年「What Mrs. Mcgillicuddy Saw!」のタイトルでDodd, Mead社から刊行された。
日本語初訳は1960年の『パディントン発4時50分』(大門一男訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ)。

早川書房

(日本語版翻訳権独占)
1960
パディントン発4時50分
大門一男訳 早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ(595)
わびしい霧のたちこめた十二月の一日―― マクギリカディ夫人はクリスマス用の買物をすませ、ロンドン発4時50分の列車に乗りこんだ。 夫人は、セント・メアリイ・ミード に住む老嬢ジェーンマープルを久しぶりに訪ねてみるつもりだったのだ。 列車の快い震動に、彼女は座席でいつしか居眠りを始めた。 が、ふと眼をさますと、列車は急カーヴにさしかかって、徐行している。 ちょうどそのとき、同じ下りの列車が、後方から、夫人の乗った列車に接近してきた。 そして、しばらくは二台の列車が、平行して走ったのだが―― その事件が起ったのは、まさにその短い一瞬だった! 平行して走る列車の一等室では、いましも、窓を背にした男が女の首を両手で締めつけているところだったのだ。 そして、女の顔は、みるみる紫色になり、ぐったりと男の両腕にくずおれていった! と、その瞬間、目前の列車は速力を増して、夕闇のなかに消えていった。 まったく、あっという間の奇妙な出来事だった。 殺された女は誰なのか? そして犯人は? だが、警察は夫人の話を幻覚と片づけて信用しなかった。 ただ、夫人の友人、ミス・マープルは、この事件に深い興味を持った……。 ミステリの女王クリスティーが自信をこめて贈るミス・マープルものの傑作!
解説:「久々のマープルもの」
1976
パディントン発4時50分
大門一男訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫(HM1-13) ISBN:9784150700133
30分も眠っただろうか、パディントン発4時50分の列車に乗り込んだマクギリカディ夫人はふと目をさました。その時、夫人は並走する同じ下り列車の車窓に殺人の瞬間を見た!男が女の首を絞め、女はぐったりと男の腕の中にくずおれた。そして眼前の列車は速度を増し瞬く間に夕闇のなかに消え去った……殺された女は?犯人は?誰も信じないこの夫人の話がミス・マープルの飽くなき好奇心を刺激しないはずがなかった!
解説:山村美紗「ミス・マープルに愛をこめて」
表紙:真鍋博
登場人物
ジェーン・マープル探偵好きの老婦人
ルーザー・クラッケンソープクラッケンソープ家の当主
エドマンド・クラッケンソープルーサー・クラッケンソープ長男。戦死
マルティーヌ・デュボワエドマンド・クラッケンソープの妻
セドリック・クラッケンソープルーサー・クラッケンソープ次男。画家
ハロルド・クラッケンソープルーサー・クラッケンソープ三男。会社重役
アルフレッド・クラッケンソープルーサー・クラッケンソープ四男。詐欺師
エマ・クラッケンソープルーサー・クラッケンソープ長女
エディス・クラッケンソープルーサー・クラッケンソープ次女
ブライアン・イーストリイエディス・クラッケンソープの夫
アレグサンダー・イーストリイエディス・クラッケンソープの息子
ジェイムズ・ストッダード=ウエストアレクザンダー・イーストリイの友達
クインパークラッケンソープ家の主治医
ダーモット・エリック・クラドックミドルシャー警察捜査課警部
ベーコン地方警察署の警部
エルスペス・マクギリカディミス・マープル友人。目撃者
ルーシー・アイレスバロウ家事の達人
キダー夫人ラザフォード邸通い女中
ジョリエ夫人マリッキー・バレエ団興業主
アンナ・ストラヴィンスカマリッキー・バレエ団団員
ウィンボーンクラッケンソープ家事務弁護士。ロンドン在
2003
パディントン発4時50分
松下祥子訳 早川書房 クリスティー文庫(41) ISBN:9784151300417
ロンドン発の列車の座席でふと目をさましたミセス・マギリカディは窓から見えた風景に、あっと驚いた。並んで走る別の列車の中で、いままさに背中を見せた男が女を締め殺すところだったのだ……鉄道当局も、警察も本気にはしなかったが、好奇心旺盛なミス・マープルだけは別だった!シリーズ代表作、新訳で登場。
解説:前島純子「ようこそクリスティーランドへ」

テレビドラマ タイアップ全帯

2004
パディントン発4時50分
米村正二脚本、石川森彦画 NHK出版コミックス 「NHKアニメ劇場 アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」(2) ISBN:9784144540851
並んで走る別の列車内での殺人事件を目撃したマープルの友人エルスペス。死体も発見されず警察の捜査も打ち切りになるが、ミス・マープルは彼女の言葉を信じ沿線の大邸宅に注目する。
2008
パディントン発4時50分
小尾芙沙訳 早川書房 クリスティー・ジュニア・ミステリ(9) ISBN:9784152089373
マープルさんをたずねる友だちのマギリカディ夫人が、その途中で列車の窓から見たのは、おそろしい光景だった。ならんで走っている列車のなかで男が女を絞め殺す瞬間だったのだ。すぐに通報したが、女の死体はどこからも発見されない。だれも信じてくれなかったが、マープルさんは別だった。みずから調査をはじめると、問題の線路付近にある大きな屋敷に目をつける…消えた死体のなぞにいどむマープルさんの作戦とは。
2020
ミス・マープルの名推理:パディントン発4時50分
小尾芙沙訳 早川書房 ハヤカワ・ジュニア・ミステリ ISBN:9784152099242
マギリカディ夫人は列車の窓から見た風景に、あっと驚いた。並んで走る列車のなかで男が女を絞め殺すところだったのだ。すぐに通報したが、死体は車内のどこにも見つからない。その話を聞いたミス・マープルは、ある作戦を思いつく。果たして死体の行方は?

映像化

映画
夜行特急の殺人 Murder, She Said
1961年 イギリス 未公開 |Murder She Said (1961) on IMDb
監督:ジョージ・ポロック 脚本:デービッド・オズボーン、デービッド・パーサル、ジャック・セドン
出演: マーガレット・ラザフォード(ミス・マープル)アーサー・ケネディ(クインパー医師)ミュリエル・パブロー(エマ)ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス(アッケンソープ)ソーリー・ウォルターズ(セドリック)チャールズ・ティングウェル(クラドック警部)コンラッド・フィリップス(ハロルド)ロナルド・ハワード(ブライアン・イーストリイ)ジョーン・ヒクソン(キダー夫人)ストリンガー・デイヴィス(ストリンガー)ロニー・レイモンド(アレグサンダー)ジェラルド・クロス(アルバート)マイケル・ゴールデン(ヒルマン)バーバラ・リークゴードン・ハリス(ベーコン警部)リチャード・ブライアーズルーシー・グリフィス
コラム シリーズとしてマーガレット・ラザフォードありきの映画なので、殺人の目撃者(原作ではマクギリカディ夫人)も潜入家政婦(原作ではルーシー・アイレスバロウ)もミス・マープルが兼ねてしまうという、八面六臂の大活躍。 ラザフォード版ミス・マープル、元気過ぎ。 随所にユーモラスなやりとりが散りばめられていて、見てて楽しいです。 キダー夫人役のジョーン・ヒクソンは、26年後にBBCのドラマシリーズでミス・マープルを演じることになります。
テレビドラマ
パディントン発4時50分 4.50 from Paddington
1987年 英BBC(全2回) 「ミス・マープル」Miss Marple |Agatha Christie's Miss Marple: 4:50 from Paddington (1987) on IMDb
監督:マーティン・フレンド 脚本:T.R.ボウエン
出演: ジョーン・ヒクソン(マープル)ジュリエット・モール(アンナ・ストラヴィンスカ)デヴィッド・ビームス(ブライアン・イーストリー)モナ・ブルース(マクギリカディ夫人)ケイティー・ジャレットデビッド・ホロビッチ(スラック警部)イアン・ブリンブル(レイク巡査部長)ローダ・ルイス(ブローガン夫人)ジル・ミーガー(ルーシー・アイレスバロウ)ジョアンナ・デヴィッド(エマ)モーリス・デナム(ルーザー・クラッケンソープ)アンドリュー・バート(クインパー医師)パメラ・ピッチフォード(キダー夫人)クリストファー・ヘイリー(アレグサンダー・イーストリイ)Daniele Stroppa(ジェイムズ・ストッダード=ウエスト)バーナード・ブラウン(ハロルド)ジョン・ハラン(セドリック)
コラム 同じ原作の『夜行特急の殺人』(1961)でキダー夫人を演じたジョーン・ヒクソン、四半世紀を経て“最も愛されるマープル女優”となりました。 ラザフォードはユーモラスで、マクイーワンは茶目っ気たっぷりで、マッケンジーもいい味出してますが、やはりヒクソンが最高です。 BBCの「ミス・マープル」は原作に忠実で、安心して観ることができます。 そして一家に一人、是非雇いたい“完璧な家政婦”ルーシー・アイレスバロウ。 最高です。 クラッケンソープ家の息子たちが次々と惚れます。 ああ、楽しい。
テレビドラマ
パディントン発4時50分 4.50 from Paddington
2004年 英ITV 「アガサ・クリスティー ミス・マープル」Agatha Christie's MARPLE Series 1 |Marple: What Mrs. McGillicuddy Saw (2004) on IMDb
監督:アンディ・ウィルソン 脚本:スティーブン・チャーチェット
出演: ジェラルディン・マクイーワン(ミス・マープル)グリフ・リース・ジョーンズ(クインパー)デビッド・ワーナー(ルーサー)ニア・キューザック(エマ)ベン・ダニエルス(アルフレッド)チャーリー・クリード・マイルズ(ハロルド)シアラン・マクメナミン(セドリック)パム・フェリス(エルスペス・マクギリカディ)マイケル・ランデス(ブライアン・イーストリイ)カーティス・オワ・ブライエン(アレグサンダー)トビー・マーロウ(ジェイムズ・ストッダード=ウエスト)ロブ・ブライドンローズ・キーガンピップ・トレンス(ノエル・カワード)アマンダ・ホールデン(ルーシー・アイレスバロウ)ジョン・ハナー(キャンベル警部)ターシャ・バートラムジェニー・アガター(アグネス)シーリア・イムリー
コラム ルーシー・アイレスバロウ登場(喝采)。 家政婦として引っ張りだこなのに、ミス・マープルから「死体を見つけてほしいの」と持ちかけられた時のやる気満々の表情が最高です。 原作でも登場がこの作品1回だけなのが本当に惜しまれます。 英国ITVの「アガサ・クリスティーのミス・マープル」は、ミス・マープルが登場しない作品もラインナップする、動機変える、トリック変える、あげくの果てに犯人変える、と、なかなか油断できないシリーズなんですが、『パディントン発4時50分』は比較的原作に沿ってます(ちょっと動機が違うかな)。 主演のジェラルディン・マクイーワンは“いたずら好き”そうな表情が印象的です。
テレビドラマ
パディントン発4時50分
2005年 NHK 「名探偵ポワロとマープル」(全4回)
放送:1月9日「その1 殺人者の乗る列車」、1月16日「その2 忍び寄る影」、1月23日「その3 シンプルな動機」、1月30日「その4 マープル対犯人」
監督:高橋ナオヒト 脚本:米村正二
声優: 八千草薫(ミス・マープル)折笠富美子(メイベル)城雅子(オリバー)浪川大輔(ハースト巡査)秋元羊介(ルーサー)篠原恵美(エマ)阪口大助(アレックス)中井将貴(ジェイムズ)さとうあい(エルスベス)平松晶子(キダー)小野大輔(車掌)大塚明夫(セドリック)小野大輔(ハロルド)桐井大介(アルフレッド)郷田ほずみ(ブライアン)納谷六朗(Dr.クインパー)樫井笙人(ウィンボーン)小形満(ベーコン警部)浜田賢二(クラドック警部)杜けあき(マルティーヌ)
コラム またもや、ルーシー・アイレスバロウは登場しません。 アニメシリーズのオリジナル・キャラクター、メイベル・ウエストがメイドとしてクラッケンソープ家に潜入します。 『夜行特急の殺人』(1961)では老嬢ミス・マープルがメイドに扮しましたが、かたやメイベルは16歳。 どちらも無理があります。 少年少女向けということもあって、わかりやすい作りになっています。 山下達郎の主題歌が耳について離れません。
テレビドラマ
嘘をつく死体
2006年 NTV 「ミス・マープルシリーズ」
監督:猪股隆一 脚本:ジェームス三木
出演: 岸惠子(馬淵淳子≒ジェーン・マープル)はしのえみ(漆原ルリ子≒ルーシー・アイレスバロウ)広田レオナ(倉林恵美≒エマ・クラッケンソープ)中村育二(倉林清二≒セドリック・クラッケンソープ)宅間孝行(倉林礼三≒アルフレッド・クラッケンソープ)大久保博元(東山光彦≒ブライアン・イーストリイ)鷲尾真知子(≒キダー夫人)野々村真(稲葉謙二郎≒クインパー医師)中丸新将(神保貞夫≒ウィンボーン弁護士)小林隆(紺野警部)正名僕蔵(島倉刑事)竜雷太(倉林輝隆≒ルーザー・クラッケンソープ)尾関優哉(東山マコト≒アレグサンダー・イーストリイ)永井大(堂本警視)木の実ナナ(牧えりか≒エルスペス・マクギリカディ)
映画
奥さまは名探偵:パディントン発4時50分 Le Crime est notre affaire
2008年 フランス |Crime Is Our Business (2008) on IMDb
監督・脚本:パスカル・トマ
出演: カトリーヌ・フロ(プリュダンス・ベレスフォルド)アンドレ・デュソリエ(ベリゼール・ベレスフォルド)クロード・リッシュキアラ・マストロヤンニメルヴィル・プポーアレクサンドル・ラフォーリクリスチャン・ヴァディムイポリット・ジラルドイヴ・アフォンソアニー・コルディヴァレリアーヌ・ドゥ・ヴァラヌーヴマリー=ローナ・バコンシンローラ・ベンソンフロランス・モーリーアガーテ・ヘイザードマリアム・ンジャイPierre DurrieuxLina Bibollet
コラム どうにかならんかな、この邦題。 探偵役はミス・マープルではなくて、トミーとタペンスです。 フランスの映画なので、タペンス・ベレズフォードではなくて、プリュダンス・ベレスフォルドです。 やっぱりというか、プリュダンス本人が家政婦として潜入捜査に当たります。 またもやルーシー・アイレスバロウ登場せず。 ラザフォード版、NHKアニメ版、フランス版と、実に3本でその役を主人公に奪われています。 それだけ美味しい役柄というわけです。 シリーズ前作『アガサクリスティーの奥さまは名探偵』(Mon petit doigt m'a dit..., 2005)でも感じましたが、この《おしどり探偵》、年齢不詳です。 孫もいるみたいなんで、見た目相応なのでしょうが...いろいろと戸惑いを隠せません。 当然のごとく、プリュダンスはシャルパンティエ家の面々に口説かれます。 情熱のフランス人。
テレビドラマ
パディントン発4時50分:寝台特急殺人事件
2018年 テレビ朝日
監督:和泉聖治 脚本:竹山洋
出演: 天海祐希(天乃瞳子≒ジェーン・マープル)草笛光子(天乃雀≒エルスペス・マクギリカディ)前田敦子(中村彩≒ルーシー・アイレスバロウ)原沙知絵(富沢恵子≒エマ・クラッケンソープ)橋爪功(山口警視庁参事官)西田敏行(富沢信介≒ルーザー・クラッケンソープ)石黒賢(佐伯慶一≒クインパー)勝村政信(唐木警部)鈴木浩介(富沢哲次≒セドリック・クラッケンソープ)桐山漣(鈴木巡査部長)黒谷友香(木村麗子)